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Posted by ミリタリーブログ  at 

2013年10月02日

第2次世界大戦における米陸軍被服に関して

 皆さん初めまして.

 初めてミリブロで記事を書きます,Otocephalaです.以後よろしくお願いします.
 わたしは第2次世界大戦の米軍とソ連軍を中心に装備を集めています.これまでは本ブログでは戦後の装備を扱っていましたが,わたしの担当回では主に第2次世界大戦の装備を扱っていきたいと思います.

 さて,今回は第2次世界大戦 (以下WW2) における米陸軍被服を紹介していきたいと思います.
 WW2において米軍は様々な新装備を開発しましたが,その一つにフィールドジャケットがあります.これはそれまでの制服と異なり,戦場(フィールド)での扱いやすさを考えて開発されたものです.制服と戦闘服が明瞭に区別されていなかった当時としては非常に画期的な事でした.そのフィールドジャケットの初まりと言えるのがこのM1941フィールドジャケットです.

M1941フィールドジャケット


 この写真では全ての兵士がM1941ジャケットを着用しています.ズボンはマスタードパンツで足周りはアンクルブーツ+レギンスです.ジャケットの下に着ているシャツは判別しかねますが、当時の標準的な着用例と言えるでしょう.

 WW2の全期を通じて米陸軍の歩兵が着用しているのがこのM1941ジャケットです.なお,WW2米軍のジャケットはこれだけではなく,空挺用のM1942パラトルーパージャケット等複数の種類がありましたが,1943年にM1943フィールドジャケット及びM1943フィールドトラウザーからなるM1943野戦服が採用され,以降野戦服はこれに統一される方向に進みます.

M1942パラトルーパージャケット

 第101空挺師団所属の兵士です.M1942パラトルーパージャケットを着用しています.なお,空挺部隊はズボンも一般部隊とは異なるM1942パラトルーパーパンツを着用していました.

M1943フィールドジャケット

 先ほどと同じく第101空挺師団です.両側に立っている2名がM1943フィールドジャケットを着用しています.ズボンはM1942パラトルーパーパンツのようです.中央の兵士が来ているのはおそらくM43HBT作業着と思われます.同部隊においてはマーケット・ガーデン作戦以降にM1943フィールドジャケットの着用が広く見られるようになります.このM1943フィールドジャケットから米軍の野戦服は色がオリーブドラブ(以下OD)になります.上記の写真では年代を正確に特定することはできませんでしたが,こちらは1945年4月頃の物です.


 写真でジープに乗っている兵士が3人いると思いますが3人ともM1943フィールドジャケットを着用しています.この頃になるとこの新型ジャケットのだいぶ浸透してきたようです.ところで・・・.この3人を取り巻く兵士の中には明らかにこれまで紹介した物とは異なる服を着用している兵士が数人見られます(矢印).実は彼らはソビエト軍兵士です.1945年4月,ドイツのエルベ川で米ソ両軍が遭遇しています.この写真はその時の物です.少々脇にそれますが写真のソ連兵士は全員M43型の制服,通称ルパシカを着用しています.戦後,東西冷戦で対立する両国ですがこのころはこのような一幕もありました.WW2ソ連軍の装備に関してもいずれ取り上げたいと思っています.

 
 戦争中に全ての兵士の装備をM1943フィールドジャケットに更新することは出来ず,M1941フィールドジャケットも終戦まで使用されました.ほぼ全ての兵士がM1943フィールドジャケットを着用するようになるのは朝鮮戦争の頃になります.

シャツとズボン
 ジャケットの下にはシャツを着るのが一般的ですが,それはWW2でも変わりません.当時の陸軍兵士達が着用していたのがこのウール製のシャツで通称マスタードシャツと呼ばれます.そしてこのシャツの下にこれまたウール製のマスタードパンツを履きます.

 マスタードシャツ


 処理に成功した不発弾と一緒に撮った写真でしょうか?一番右に立っている兵士がマスタードシャツのみを着用しています.胸に2つのポケットがついているという,シャツとしてありふれた形式をしています.

 マスタードパンツ


 こちらの写真で着用しているズボンがマスタードパンツです.前述の通りシャツ,パンツ共にウール製であったため雨等で濡れると縮んでしまい,兵士としては後述のHBT作業着の方が使い勝手が良かったそうです.

 マスタードシャツ及びパンツは1943年にコットンサテン製HBT生地のM1943HBT作業着(HBTユニフォーム)に順次更新されるようになります.なお,このHBT作業着の色はODもしくはダックハンターです.作業着とありますが実際には戦闘服としての使用も考慮されており,言い切ってしまえばベトナム戦争時のユーティリティのはしりと言える服でした(そのため人によってはこれを最初期のユーティリティとする人もいます).

 HBT作業着
 
 第2機甲師団所属の兵士です.彼らは皆、M43HBT作業着を着用しています.興味深いことに一番右の兵士以外のM43HBT作業着はダックハンターの迷彩色になっています.ダックハンター迷彩は海兵隊によって太平洋戦線では使用されていたことはよく知られていますが,欧州戦線でも初期の頃は使用されていました.しかし敵軍であるドイツの武装SSが使用した迷彩服と誤認され誤射が発生したために欧州戦線では使用されなくなりました。写真で左側に集められているのはドイツ軍兵士で,武装解除していることから捕虜だと思われます.
 

 このように一口にWW2米軍の被服と言っても様々な種類がありました.基本的にこれらの服は軍によって着用例が定まっているのですが,1944年になっても装備が一部しか更新されずジャケットはM1943、シャツはマスタード,ズボンもマスタードパンツと言ったように被服の混在が見られる事もあったそうです.

コレクション
今回はマスタードシャツの紹介です.



 このシャツは100%ウール製.生地は比較的柔らかくいわゆるフランネルの分類に入ります.ロット等を示す表示がないため正確な型式や製造年代を特定することはできませんでしたが,素材とその形状からマスタードシャツであることは明らかです.欧州戦線においては広く着用が見られるシャツですが,太平洋戦線などの熱帯地方ではこれと同じデザインで素材がコットンの「チノシャツ」が用いられました.ウール製なためか真夏に着るとこのシャツだけでもサウナ状態になります.余談ながらWW1の米軍もこのシャツと同様の素材とデザインのシャツを着用していました.ただ、同じ物であるかは私には分かりません.今後調べてみたいと思います.

 ご閲覧ありがとうございました.

 ※ご指摘・ご質問等がありましたら遠慮なくコメントしてください.
  


Posted by SMC  at 19:32Comments(0)第2次世界大戦